1. HOME
  2. 福島あつし展
2021/8/10~9/25
IG Photo Gallery企画展

福島あつし展「ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ」

       

 福島あつしは大阪芸術大学写真学科、東京綜合写真専門学校研究科を卒業したのち、老人の住まいに弁当を届けるアルバイトを始めました。
 当初は撮影を考えていませんでしたが、福島の経歴を知った店長のアドバイスで老人たちの写真を撮るようになります。撮影はコミュニケーションのきっかけにもなりますが、同時に、カメラを向けシャッターを切ることの倫理的な側面を福島に意識させることになりました。
 彼らの部屋やポートレートを撮影することは良いことなのか、それとも悪いことなのか。福島は幾度か撮影を中断し、仕事から離れ、また戻ることを繰り返したといいます。「撮ること」への葛藤をかかえつつ、十年という時間をかけて完成したのがこの作品です。
 このシリーズは一昨年、「弁当 is Ready.」というタイトルでKYOTOGRAPHIEの「KG+ SELECT | 2019 Grand prix」を受賞。昨年、KYOTOGRAPHIEであらためて展示されました。また、NHK Eテレの「ハートネットTV『配達弁当とおひとりさま』」(2021年3月3日放送)で福島の作品が紹介され話題を呼びました。
 今回の展覧会は写真集刊行(*)にあたり、「ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ」と改題し、写真集に収録された写真をもとに展覧会として構成するものです。
 超高齢化社会を迎えたこの国で、独居老人のケアが社会問題となっているのは周知の通りです。しかし福島はジャーナリストのように社会問題として彼らの姿を捉え、問題提起しようとはしていません。同じ人間として、この現実をどう考えるべきかと自問自答しながら撮り続けた結果をともに考えるために発表してきました。いわばパーソナルな視点による記録写真なのです。
 撮ることは交流であり、彼らの人生にほんの少し触れることでもありました。弁当とカメラを間に挟んだ関係から生まれたこれらの写真は、社会と個人、老いと生活、人間にとっての食べる行為、といった複数のテーマを浮かび上がらせます。
 誰もが年齢を重ね、いずれは年老います。他人事ではなく、誰にとっても身近な問題だからこそ、写真を前に、考えてみていただければ幸いです。

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)

*写真集『ぼくは独り暮らしの老人の家に弁当を運ぶ』(青幻舎:3,960円税込)を会場及びOnline Shopで販売いたします。

** 安心してご覧いただくため、清浄機の設置、手指の消毒薬などの感染対策を行います。

■作家プロフィール
福島あつし(ふくしま・あつし)
1981年神奈川県生まれ。2004年大阪芸術大学写真学科卒業。2006年東京綜合写真専門学校研究科修了。2008年 ニコンサロンJuna21 選出。 2019年KG+ Award 2019グランプリ受賞し、翌年の「KYOTOGRAPHIE2020」で個展を開催。そのほかの主な個展に「木を植える旅」(Kobe 819 Gallery 兵庫 2018年)、「食を摂る」(ニコンサロン bis 東京 2018)、「SCOPE」(ニコンサロン 東京2004)などがある。

■会期
2021年8月10日(火)~9月25日(土)
時間:12:00~20:00(最終日は18:00まで)
休廊:日曜日・月曜日・祝日

■トークセッション(無観客)
8月14日(土)18:00~
福島あつし×タカザワケンジ(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)
You Tubeにて、配信いたします。
チャンネル名:IG Photo Gallery


Page Top