IG Photo Gallery企画展
原美樹子展「果実がうれておちるときを」

IG Photo Galleryでは2025年10月28日(火)より、原美樹子展「果実がうれておちるときを」を開催いたします。当ギャラリーでは初めての個展となります。原にとっても東京で新作展を行うのは「THESE ARE DAYS」(2015、実家 JIKKA)以来10年ぶりとなります。
原美樹子は1996年の初個展「Is As It」以来、国内外で写真作品を発表してきました。2007年の個展「Blind Letter」 Cohen Amador Gallery (ニューヨーク)以降、海外でも注目を集め、2014年には長野重一、森山大道、瀬戸正人との四人展 「In Focus: Tokyo」(ゲティ美術館、ロサンジェルス)に出品しています。2017年に写真集『Change』で第42回木村伊兵衛写真賞を受賞し、2022年にフランスのChose Communeから出版された写真集『Small Myths』により、2023年に第39回写真の町東川賞国内作家賞を受賞しています。
原が撮影したスクエア画面に写っているのは女性や子ども、猫や植物、背景となるのは街角や河原、家の中など。こうして言葉にしてしまえば、ありふれた都市生活者が目にする日常が写った写真を思い浮かべることでしょう。
しかし原の写真には日常や生活、都市といったキーワードからはこぼれ落ちてしまう何かがあります。
カメラが浮遊するように傾いたカメラワークは作者の視線をシェアするというよりは、カメラだけが漂いながら何かを探しているようにも感じます。
原は撮影にあたってファインダーをのぞかずに撮影することがあると明かしています。ファインダーをのぞいた写真であっても、原が使っているクラシックなフィルムカメラのファインダーは不確かなものです。原は1930年代製のドイツ製カメラ、イコンタにやはりドイツのアグファ製レンズをつけ、ネガカラーフィルムを入れて撮影しています。プリントも大判以外は自身の手で行っています。
原にとって写真は日々の中で、ある瞬間に出会って撮影する行為の積み重ねです。その光景、瞬間を選んだ理由はおそらく作者の中にあるのですが、それが意識の上にのぼるまえにシャッターボタンを押しているかのような、とらえどころのなさがあります。鑑賞者は写真の前で作者が何を見て、何を考えているかを想像したくなります。
想像を喚起するという意味では、「果実がうれておちるときを」という今回の展覧会のタイトルも、想像をめぐらせたくなる言葉です。たとえばそれは、写真行為を積み重ねてきた作者の時間と、そこから生まれたイメージの数々が、やがてまた地に落ちて新たな芽吹きとなる予感を感じさせます。
原の写真に込められているのは観客へのメッセージではなく、クエスチョンであるのかもしれません。この不確かな世界で生きるということから生まれる問いかけのような。それはきっと、生きることに対して何らかの引っ掛かりを感じている人たちと共有できる「何か」と深い関わりがあると思うのです。
ぜひギャラリーでその「何か」を探してみてください。
また、11月8日(土)にはギャラリーからオンラインでトークセッションをライブ配信予定です。そちらもぜひご視聴ください。
■作家プロフィール
原美樹子(はら・みきこ)
1967年富山県生まれ。1990年慶應義塾大学文学部卒業。1994年東京綜合写真専門学校第二学科、1996年同研究科卒業。1996年の初個展「Is As It」。2017年に第42回木村伊兵衛写真賞、2023年に写真の町東川賞国内作家賞を受賞。主な写真集に『Hysteric Thirteen: Hara Mikiko』『Change』『Small Myths』。
■会期
2025年10月28日(火)~11月15日(土)
時間:11:00~18:30
休廊:日曜日・月曜日・祝日
入場無料
** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。
■トークセッション(オンライン)
11月8日(土)18:00より配信予定
原美樹子×タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)
YouTubeライブで配信予定ですが、不調の場合はインスタライブに変更する場合があります。
アーカイブはYouTubeにアップする予定です。
チャンネル名:IG Photo Gallery