IG Photo Gallery企画展
石田省三郎展「Metamorphose」
IG Photo Galleryでは2025年4月7日(火)より、石田省三郎展「Metamorphose」を開催いたします。
石田省三郎は2018年に写真集『Radiation Buscape』を刊行し、写真家としての活動をスタートしました。同時にIG Photo Galleryを設立し、現代の写真作家の企画展を行うとともに、自身の作品をコンスタントに発表してきました。2021年からは写真と並行して映像作品の制作を始め、金村修、小松浩子、梅津元によるコレクティブModulation 8主催の上映会「PROJECTED PROJECTION」での上映を行っています。
今回の「Metamorphose」展は、都市の変容をテーマに写真と映像で構成されます。
石田の作品を振り返ると、原発事故後の帰還困難区域(「Radiation Buscape」)から出発し、電力によってつくられた都市風景(「Integral」「Crossing Ray」「Nights,Walking:Chigasaki」)、生鮮市場(「TSUKIJI JONAI 2018」)、水門(「Where Water Meets the City」)と、都市を支えるインフラストラクチャーに目を向けて、作品の領域を広げてきました。
それらは現代の消費社会の繁栄の表象であるとともに、東日本大震災を経て私たちが漠然と抱えるようになった不安──高度に構築された都市生活が抱える脆さ──を内包するものでした。石田は東日本大震災以後の都市写真を模索してきた作家だと言えるでしょう。
今回の「Metamorphose」展は、石田にとって新たな展開となります。これまで福島、銀座、築地、茅ヶ崎、東京と撮影場所を横に広げてきた石田が、縦、つまり時間軸に掘り下げています。
2015年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)通信写真コースに入学した石田は、初めて本格的に撮影を始めます。撮影技術の向上のため、1日100カットの撮影を課した石田は、主要な被写体として現在まで関心を寄せる首都圏の都市部を選んでいました。
また、2021年から始めた映像作品《unknown diary》に繰り返し現れるのもまた都市の風景です。《unknown diary》は石田による映像日記であり、日々目にしたものを1カット2秒で撮影し、毎週15分~20分ほどのショートムービーに編集するシリーズで、現在進行中です。《unknown diary》は作家の日々を記録した生の軌跡であると同時に、都市生活者である作家自身をサンプルとした、都市のありようの記録でもあります。
今回の展示では、こうした積み重ねの中から、写真は2015年から、映像は2021年からのものをもとに都市の変容をテーマに編集・構成します。
石田は都市に向けるまなざしについて、マルクスが「凝固した労働時間」と呼んだ概念を参照し、都市の建築物やインフラを、過去の人々の労働が積み重なった「成果」だという視点をステートメントで述べています。
ふだん私たちは、たえず新しい建物が壊されては造られ、気がつくと大きく変容している都市の姿を意識することなくただ見ていますが、石田の写真、映像を見ることで、あらためてその変化の背景に莫大なエネルギーが費やされていることに気づくことでしょう。
「Metamorphose」展は、石田がこれまで撮影してきた写真・映像に別の角度から光を当てる試みであり、新たな展開へとつなげる第一歩となるはずです。ぜひ、ご覧下さい。
<ステートメント>
都市は、静止した物質の集積ではない。それは絶え間なく脈動し、かたちを変え続ける巨大な生命体に似た存在である。都市の骨格をなすインフラストラクチャーや、建設現場の荒々しい断面、無機質な構造物。それらは、私たちが文明を維持するために生み出した「都市の臓器」であり、その姿を記録することは、現代社会の輪郭をなぞる作業でもある。「Metamorphoze」という言葉に託したのは、単なる都市の外観の変化だけではない。「すべての建築物や都市の構造体は、人間の労働力が形を変え、物質化したものである」という視点を見逃すべきではない。
見上げるような高層ビル、大地を這う高速道路、地下に張り巡らされた巨大な配管。それら巨大な構造物を前にしたとき、その質量に目を奪われる。しかし、それらは突如としてそこに現れたわけではない。そこには膨大な数の人間の時間が、筋肉の動きが、そして知恵が、コンクリートや鉄鋼という物質へと置換され、蓄積されている。マルクスが商品を「凝固した労働時間(geronnene Arbeitsseit)」と呼んだように、これらの物質はいわば「凍てついた労働の姿態転換」に他ならない。
かつての展示では、インフラという都市の基盤に光を当ててきた。それは都市を支える物理的な仕組みへの関心から始まったものだが、時を経て、視線はその表面を越え、そこに関わった人々の「不在の気配」へと向かうようになった。無機質な鉄骨の組み上がり、積み上げられたブロックの規則性、あるいは解体され剥き出しになった物質の断面。そこには、かつてそこで動いていた誰かの手、誰かの意思の痕跡が刻まれている。
都市が変貌(Metamorphoze)するということは、かつての労働の蓄積が新たな形へと再編され、あるいは消失し、また新たな労働が注ぎ込まれるプロセスを指す。古いビルが取り壊され、更地になり、また新たな構造物が立ち上がる。その循環の中で、労働という形のないエネルギーは、都市という巨大な彫刻へと昇華されていく。
本展で展示される作品群は、都市の「今」を切り取った断片でしかない。だがその向こうに、流れ続ける時間を刻み、都市を構築し続ける無数の人々の鼓動が聞こえる。
都市は今日も、誰かの労働を糧にその姿を変えていく。その変貌の刹那を、これからも追い続けていきたい。
■作家プロフィール
石田省三郎(いしだ・しょうざぶろう)
1946年生まれ。中央大学法学部卒業。弁護士として「土田、日石、ピース缶爆弾事件」、報道写真の証明力が問題とされた「沖縄・松永事件」、「ロッキード事件」、「リクルート事件」などの刑事事件の弁護に携わる。著書に『「東電女性社員殺害事件」弁護留書』など。2017年、京都造形芸術大学(現;京都芸術大学)通信写真コースを卒業。その後、金村修ワークショップを継続的に受講。2018年、福島第一原子力発電所事故により「帰還宅困難区域」に指定された地域をJR常磐線代行バスから撮影した写真集『Radiation Buscape』(デザイン鈴木一誌+山川昌悟、解説タカザワケンジ)を刊行。 IG Photo Gallery主宰。
http://showishida.jp
個展
「Radiation Buscape」(IG Photo Gallery 2018)
「Crossing Ray」(大阪:HIJU GaIIery 2019)
「Radiate-scape」&「Crossing Ray」(IG Photo Gallery 2019)
「Integral」(IG Photo Gallery 2021)
「Nights,Walking:Chigasaki」(神田:ギャラリー・アートグラフ 2022)
「TSUKIJI JONAI 2018」(名古屋:PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA 2022)
「an ironical moment」(IG Photo Gallery 2023)
「Where Water Meets the City」」(IG Photo Gallery 2025)
など
映像
《unknown diary》
「Modulation 8 第一回上映会」(The White, 2022)
「MOVING IMAGES」(IG Photo Gallery, 2023)
「PROJECTED PROJECTION vol.01
以後の風景 石田省三郎feat.金村修」(CAVE-AYUMI GALLERY,2024)
「PROJECTED PROJECTION vol.02
以後の風景 石田省三郎feat.諫山元貴」(CAVE-AYUMI GALLERY,2025)
写真集など
写真集「Radiation Buscape」(IG Photo Gallery 2018)
ZINE「Crossing Ray」(IG Photo Gallery 2019)
ZINE「TSUKIJI JONAI 2018」(IG Photo Gallery 2020)
ZINE「Integral」(IG Photo Gallery 2021)
ZINE「Nights,Walking:Chigasaki」(IG Photo Gallery 2022)
ZINE「an ironical moment」(IG Photo Gallery 2023)
ZINE「Where Water Meets the City」(IG Photo Gallery 2025)
など
受賞
「第56回神奈川県美術展」準大賞(2021)
FOTOZOFIO Artist 2021
■会期
2026年4月7日(火)~5月2日(土)
時間:11:00~18:30
休廊:日曜日・月曜日
入場無料
** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。
■トークセッション(オンライン)
石田省三郎×タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)
2026年4月11日(土)18:00よりライブ配信予定
YouTubeにて、配信いたします。
チャンネル名:IG Photo Gallery
*これまでのトークセッションの録画もあります。
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