IG Photo Gallery |ヴィクター・シラ展「Europass」  


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2025/7/15~8/2
IG Photo Gallery企画展

ヴィクター・シラ展「Europass」

 IG Photo Galleryでは2025年7月15日(火)より、ニューヨークを拠点に活動する写真作家、ヴィクター・シラ展「Europass」を開催いたします。
 IG Photo Galleryでのシラの個展は、2022年の「Pictures of Nothing: Bookworks and Photographs」、2023年の「NO PLACE: SOMEWHERE」、2024年の「Caracas: Homecoming」に続く4度目となります。
 ヴィクター・シラはダミーブック(写真家が写真集にするためにつくった見本)をアートフォームとして評価するムーブメントの先駆者として知られています。今回の展覧会でも写真作品の展示だけでなく、ダミーブックの展示も予定しています。
 本展では、iPhoneが登場しSNSが普及する以前の時代、2001年から2006年にかけて、ヨーロッパを鉄道で旅して撮影した作品を発表します。シラの表現を借りれば「写真がまだ『日常の記録』ではなかった時代」の写真作品です。
 タイトルの「Europass(ユーロパス)」は、1959年から販売が始まった、ヨーロッパを横断して移動できる鉄道パス「ユーロパス」(現・ユーレイルパス)に由来しています。
 ヴィクター・シラは、懐があまり豊かではない多くの若者がそうだったように、このパスを利用しました。夜行列車で旅をし、朝に目的地で目覚めるという旅を好んでいたといいます。
 眠い目をこすりながら彼が見たのは、窓外に広がる初めて見る風景であり、どこの国でも同じように繰り返される、大きな荷物を持った旅人たちの姿でした。出会いと別れの交差点でもあるプラットフォームは、旅と人生を重ねる経験を彼にもたらしたことでしょう。ベネズエラ出身で、米国に拠点を置く彼にとって、ヨーロッパの旅は「青春の旅」というべきものだったに違いありません。
 これらの作品は、シラの代表作の一つであるフォトエッセイ「Points of Entry」と平行して撮影されました。  「Point of Entry」はW・ユージン・スミス記念基金とルクセンブルク文化大臣によるモザイク・フェローシップを受けて制作されました。北フランスのカレー、南スペインのセウタ/タリファ、EUの東側国境に位置するモルドバの三カ所を取材し、EUに流入する移民を追った作品です。
 「Point of Entry」では移民を主役としていたのに対し、「Europass」では人々は目の前を通り過ぎていく風景の一部です。展示される作品の多くはシラの心象風景というべき写真となります。
 展示では、前回の「Caracas: Homecoming」と同様、大判プリント上に小さなプリントを重ねて貼り、ダミーブックを展示する予定です。瞬く間にスワイプし消費されていくSNSの写真ではなく、写真の前で立ち止まり、物体としての写真の束の「実物」を前にすることは、ヴィクター・シラの私的な旅に同行する貴重な体験になることでしょう。
 なお、7月19日(土)には作家と当ギャラリーのディレクターによるトークセッション(オンライン)が配信されます。そちらもぜひ、ご覧ください。

タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)


■作家ステートメント
Europass / Victor Sira
I like traveling by train through the night and waking at my destination the next morning. The train stops at many stations along the way. Often exhausted and half-asleep, I gaze out the window at the dark landscapes: one train passing another, travelers on the platform struggling with luggage, people at the doors bidding farewell to loved ones.
The images in this show were taken between 2001 and 2006ーa time before the iPhone's 2007 debut and the rise of social media, when photography wasn't yet an omnipresent reflex. These pictures were captured with a Leica M6 and a Ricoh GR1 (a compact black 35mm point-and-shoot film camera) during my travels for Points of Entry, a photo essay exploring the movement of immigrants and refugees into Europe.
The Europass, introduced in 1959 (now known as the Eurail Pass), allows unlimited travel across 33 European countries. Sometimes I'd spend days on the train?waking in a different city each morning, exploring for the day, then boarding a night train to the next destination.

Europass(ユーロパス)/ヴィクター・シラ
夜行列車に揺られ、新しい土地で眼が覚める--そんな旅が好きだ。途中、無数の駅で目にするのは、窓の外を流れる景色すれ違う列車、プラットフォームで荷物と格闘する人々、車両のドアで愛する人に別れを告げる姿。
本展の写真は2001年から2006年にかけて撮影された。2007年にiPhoneが登場する前、SNSが普及する前--写真がまだ「日常の記録」ではなかった時代の作品だ。ライカM6とリコーGR1(コンパクトな35mmフィルムカメラ)で撮影され、欧州への移民・難民の移動を追ったフォトエッセイ『Points of Entry』の旅で生まれた。
1959年に導入された「Europass」(現・ユーレイルパス)は、33ヶ国を自由に移動できる切符だ。私は時々、何日も列車で過ごした--朝には新しい街で降りて散策し、夜にはまた次の列車に乗り込む、そんな日々を。

■作家プロフィール
ヴィクター・シラ Victor Sira
ベネズエラ出身、ニューヨークを拠点に写真、ビデオ、アーティスト・ブックなど幅広い分野で活躍するアーティスト。ジョン・サイモン・グッゲンハイム記念財団、アンドレア・フランク財団、W・ユージン・スミス財団、ニューヨーク芸術財団などからフェローシップを授与されている。国際写真センター(ICP、ニューヨーク)の展覧会「Photography Book Dummies」(2008)のキュレーションを担当。芸術活動に加え、ICP-Bard MFA Program in Photographic Studies、SUNY Purchase School of Art and Design、Hartford Art School's MFA Photography Programで教鞭をとる。また、ペンシルバニア大学デザイン学部の客員講師も務めている。シラはアーティストブック専門のプラットフォーム、bookdummypressの共同設立者でもある。

■会期
2025年7月15日(火)~8月2日(土)
時間:11:00~18:30
休廊:日曜日・月曜日・祝日・7月19日(土)
** 安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。

■トークセッション(無観客)
7/19(土)18:00より配信予定
ヴィクター・シラ×タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)
You Tubeにて、配信いたします。
チャンネル名:IG Photo Gallery

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